老後の生活資金に関して、一つ確実に言えるのは、年金だけだと生活はかなり苦しくなるという点です。具体的にどの程度足りなリカは人によって違うのでなんとも言えませんけどね。
それでは、年金以外に毎年100万円使えるようにするには、いくら準備をしておく必要があるのでしょうか。実は、これは、なかなか難しい問題です。
年金+100万円を用意するには
老後の生活資金をいくら準備するのがいいかというのは、私達にとって大きな問題の一つでしょう。ただ、別のページに書いたように、具体的な数字を挙げるのはちょっと難しいと言うのが現実です。
具体的にいくらというのが難しい理由を簡単に理由を説明すると、将来に不確定要素が多すぎるからです。例えばインフレの可能性がありますし、年金制度も変わる可能性があります。
ただ、「今の物価水準で、年金に加えて毎年100万円用意するにはどうすればいいか?」という設問なら考えることも可能です。
まずは今の給付水準を基準に考えよう
公的年金の給付水準がどうなるかは、率直に言って、時間が経ってみないとわかりません。まあ、今の水準よりは減ることは間違いないでしょうけどね。
その一方で、一部の人が大騒ぎするように、全くもらえなくなるというのも考えにくいでしょう。マスコミなどを中心に、年金が全く貰えなくなるかのように煽る人がいます。
でも、そんなことは、どう考えても起こりえないのです。彼らが何を根拠にしているのかよくわかりませんが、大げさすぎるとしか思えません。
おそらく、「現在の水準から何割か引き下げられる」「何年か受給開始が遅れる」というのが実際に起こりうる変更でしょう。このくらいの変更であれば、現在の年金システムは、十分に維持が可能なのです。
ということは、老後の資金を考えるときには、やっぱり、現在の給付を基準に考えるべきです。まあ、それより少し減る(あるいは給付が遅くなる)という程度に思っておくという感じですね。
ポイント:公的年金制度が破綻することは考えづらい。ただ、給付水準が下がるか、給付開始が遅くなる可能性は大きい。
ある程度の準備は必要
さて、そうなってくると、やっぱり年金だけでは生活を営むのは難しと考えるべきでしょう。年金だけでも最低限度の生活はなんとか営めるとしても、余裕がある暮らしができるとは思えません。
今の水準でも、年金だけで暮らそうと思うと、かなり厳しいわけです。そこからもう少し減るわけですから、本当にギリギリになってしまいます。
となると、年間100万円なのか200万円なのかはわかりませんが、年金以外にも使えるお金を用意するべきです。老後に公的年金だけのギリギリの生活をするなんて、ちょっと避けたいですからね。
ちなみに、将来は物価が大きく変動している可能性もあります。ですから、今の水準で100万円とか200万円とかの余裕資金を作るという話です。
インフレを考えれば、20年後の100万円は今の価値にすると30万円しかないなんてこともあるかもしれませんからね。それでは意味がないのです。ここまでのことが起こる可能性は小さいと思いますけどね。
さて、こういう計画を立てるときには、どうしたらいいのでしょうか。
ポイント:今の物価水準で年100万円、200万円程度の余裕資金を用意することを考えよう。
金融資産を取り崩すのか、全部残すのか
老後の資金を準備するには、現役のうちにある程度の金融資産を用意する必要があるでしょう。ここまでは同意していただけるのではないかと思います。
問題は、この金融資産を取り崩していくのか、元本は使わないで運用益だけでなんとかするのかでしょう。
将来何歳まで生きるかはわかりません。そうなると、極力元本は使わないで運用益だけで対処したいと思うのが、自然な感覚でしょう。
問題は、そんな事が可能なのかということです。運用で年100万円儲けるって、そんなに簡単では無さそうですからね。
あるいは、元本を取り崩さざるを得ない場合は、どういうペースで金融資産を現金化していけばいいのでしょうか。単純に今後生きるだろうと思われる年数で金融資産を割ればいいのでしょうか。
ポイント:運用益だけで年間100万円から200万円を用意する?元本を削って、なくなる頃にちょうどゼロになるように計画する?
元本を減らさないで年間100万円を用意するには
まず、元本を減らさないで、運用益だけで年間100万円用意するにはどうしたらいいでしょうか。
残念なことに(?)、人間というのは将来何歳まで生きるかわかりません。そうであれば、極力元本には手を付けないで、運用益だけで対処したいものですよね。
そんなふうに考えた場合は、いくら準備する必要があるのでしょうか。
運用で毎年100万円増やせばいい
この場合は、引退する年までにある程度まとまったお金を用意し、それを運用することになります。毎年100万円ほしければ、毎年の運用益が年100万円になるようにすればいいわけですね。
はっきり言って、理屈としてはとても簡単です。でも、そんな事ができるのでしょうか。
とりあえず言えることは、安全な資産(銀行預金や国債など)で運用しても、ほとんど増やすことができません。ですから、ある程度のリスクをとって運用することになります。
具体的には、国内株式や外国株式などが中心の運用となるでしょう。その他には、REIT などが考えられるでしょうか。
あまりおすすめはしませんが、外国債券という選択肢もあるかもしれません。
利回りは年5%が上限
国内株式や外国株式で運用する場合、全てを株式で運用したとすると、平均年5%程度のリターンを期待していいでしょう。この数字がどこから来ているかというと、年金基金などの期待収益率を参考にしています。
期待収益率というのは、過去のデータなどから見た、資産別の予想利回りだと思ってください。年によってバラツキはありますが、平均すると期待収益率くらいは増えるということです。
そして、年金基金などでは、株式の期待収益率を年5%程度としていのです。
個人の資産運用の場合、株式が最もリスクとリターンが大きいと考えていいでしょう。ということは、私たちが運用した場合の利回りの上限は5%くらいということになるわけです。
全てを株式などのハイリスクな資産で運用すると、年5%増える計算になりるわけですね。そして、少しリスクを減らして安全な資産を混ぜると、例えば期待収益率を3%程度に調整するなんてこともできます。
ポイント:目一杯リスクをとって運用しても、年5%程度が限界です。
運用で年100万円儲けるにはいくら金融資産を準備する
仮に年3%で運用できるとすると、3000万円用意しておけば、運用益で年90万円が入る計算です。もっとも、運用益には所得税などの税金がかかりますから、3%の運用を想定するなら4000万円程度の準備は必要でしょう。
仮に年5%だとすると、2000万円用意しておけば、運用益は100万円ます。これも所得税などを考慮すると、2500万円程度の準備は必要そうですね。
このあたりが一つの目安になりそうです。
物価上昇を考慮する
ちなみに、今の価値で100万円を用意したいわけですから、ここからさらに物価の上昇分を加味しないといけません。ということは、実際に準備する金融資産は次のようになります。
3%で運用する場合:4000万円 × 物価上昇
5%で運用する場合:2500万円 × 物価上昇
例えばあなたが65歳になるまでに、物価が今の水準から2倍に上昇したとします。この場合は、5000万円から8000万円準備しないといけないことになります。
あるいは、全く物価が上昇しなければ、2500万円から4000万円準備しておけばいいわけですね。あと数年で引退するという人なら、こういうケースも考えられるでしょう。
かなり大雑把ですが、元本を取り崩さないプランはこんな感じです。イメージは掴めるたのではないでしょうか。
死ぬ時にちょうど使い切るのが理想
上に示したような元本は減らさないプランでは、年金と運用益だけで生活する事ができます。これは、確かに安心なプランです。
でも、このプランを選ぶ場合は、かなり大きな金額が必要になります。年間の運用益を出すだけでも2500万円から1000万円程度は準備が必要です。
しかも、結構大きなリスクを取る必要も有ります。運用で失敗して、虎の子の金融資産が大幅に減ってしまうということも起こりかねません。
ですから、実際には、ちょうど自分が死ぬまでに金融資産を使い切るという感じでプランを作る方が一般的でしょう。
もっとも、自分(と配偶者)が死ぬタイミングは、事前にはわかりません。思ったより短命の可能性もありますし、100歳を超えて長生きすることだって考えられます。
ですから、平均寿命などから考えて、ちょっと余裕を持ったプランを作ることにします。
2つの問題
さて、このプランを考えるときに、2つ問題があります。
■ 何歳まで生きるのか分からない
一つは、上でも書きましたが人間は何歳まで生きるか分からないという点です。
極端な話ですが、明日死んでしまう可能性だってゼロではありません。その一方で、100歳を超えて生きる可能性もあります。
死ぬタイミングで財産を使い切るようなプランで考えていたのに、長生きしたためにお金がなくなる。こんな未来は避けたいですよね。
とは言え、よほどの余裕がある人を除いでは、元本に手を付けないで運用益だけを頼りに生きることもできません。ですから、ある程度の寿命の想定は必要です。
それでは、自分が何歳まで生きるかという想定は、どのあたりに置くといいのでしょうか。
ポイント:自分が何歳まで生きると見積もるか。
■ 運用益があるので計算が複雑
もう一つの問題が、取り崩す前の金融資産が運用益を生むという問題です。これはいいことですが、話はかなり難しくなります。
金融資産を全く運用をしないのであれば、例えば自分が生きると思う年齢から65歳を引いた数で、自分の金融資産を割ればいいでしょう。こうすれば、毎年均等にお金を使うことができます。
しかし、実際には、自分が引退後も金融資産は運用すると考えるのが自然です。当然ですから運用益が出るわけですから、単純に金融資産を年数で割るというのでは、具合が悪いことになります。
この点はどうしたらいいのでしょうか。
何歳まで生きると想定するか
さて、1つ目の問題について考えてみましょう。何歳まで生きるかという問題です。
実はこれにはある程度の答えが有ります。平均寿命や平均余命の統計を簡単にチェックできるので、それをもとに、さらに何年か余裕を見て考えればいいのです。
ちなみに、平均余命というのは、ある年齢から平均で何年生きられるかという統計です。例えば、65歳時点の日本人の平均余命は、 男性が81.09歳で、女性が87.26歳1 です。
ということは、女性の場合だと、65歳から平均で22年くらいは生きるわけです。これより長生きをする可能性もありますから、65歳から25年、あるいは30年生きると想定しておけばある程度現実的な計画が立てられるでしょう。
ということで、女性の場合は90歳まで生きるという想定で考えればいいでしょう。さらに余裕のある計画にしたければ、95歳まで生きると考えてもいいかも。
男性の場合は、20年から25年程度の余裕を見ておけばいいでしょうね。つまり、85歳まで生きるという想定で計画を立てれば良さそうです。さらに余裕を見て、90歳としてもいいでしょう。
ポイント:女性は90歳、男性は85歳まで生きると考えて、計画を立てましょう。
取り崩す金額を決める方法
次に、毎年の取り崩す金額の決め方です。運用して増やすことができる場合、取り崩す額はどう決めればいいのでしょうか。
実はこれに関しても、便利なツールがあります。年金現価係数表という表があるのですが、これを使うと運用をしながら取り崩す場合、毎年いくら取り崩せるかがわかります。
具体的には、次のような表です。
年 | 1% | 2% | 3% | 4% | 5% |
20 | 18.046 | 16.351 | 14.877 | 13.59 | 12.462 |
25 | 22.023 | 19.523 | 17.413 | 15.622 | 14.094 |
30 | 25.808 | 22.396 | 19.600 | 17.292 | 15.372 |
そして、この表の数字(年金現価係数)と取り崩す金額の関係は、次のような関係になっています。
金融資産の総額 = 年金現価係数 × 毎年取り崩す金額
年金現価係数を使ってみよう
これだけでは分かりづらいという人もいると思うので、いくつか具体例を挙げてみましょう。
■ いくら準備するか計算してみよう
仮に、毎年100万円を30年間取り崩すとすると金融資産がいくら必要かを考えてみることにしましょう。ちなみに、ここでは、運用利回り年3%とします。
この場合、年金現価係数表で「30年 – 3%」のところを見ると、19.6という数字が出てきます。この数字を使うと、必要な金融資産が分かるわけです。
金融資産の総額 = 19.6 × 100万円
= 1960万円
ということで、約2000万円用意しないといけません。
運用無しで取り崩すと、毎年100万円用意するには、3000万円必要です。しかしあ、老後にも運用することで、2000万円まで減らす事ができるわけですね。
■ 3000万円ある場合、毎年いくら使える?
逆に、金融資産が3000万円あって、これを20年で取り崩したいと思ったとします。運用利回りを5%とすると、年金現価係数は12.462となります。
ここから、次のように計算できます。
3000万円 = 12.462 × 毎年取り崩す額
毎年取り崩す額 = 3000万円 ÷ 12.462 = 2407318
つまり、年間240万円は使える計算になるわけです。
まあ、こんな感じで、自分のケースに当てはめて計算してみてください。
運用利回りはどう決める?
ちょっと難しいのが、運用利回りをどう決めるかでしょう。これに関しては、おおよそ次のように考えてください。
上にも書きましたが、全額株式や株式で運用する投資信託に投資する場合は、年5%程度の運用利回りは想定できます。年ごとのバラツキはありますが、平均すればこの程度だと考えられるのです。
個人の長期の資産運用では、株式での運用が最もハイリスク・ハイリターンでしょう。ということは、上限5%でリスク商品の割合などで予想リターンを決めていくという形で考えればおおよその数字は考えられるはずです。
リスク商品の場合は、正確にどの程度増やすかを予想するのは不可能です。ただ、過去の実績などから、おおよその利回りを考えることは可能なのです。
具体的には、目一杯リスクを取る場合は5%、株式中心で運用する場合は3%、株式は3割ぐらいで運用する場合は2%くらいの感じでいいのではないかと思います。
もっとも、株式以外の資産が何かにもよりますけどね。
例えば、REIT(不動産投資信託)の場合は、株式ほどではないにしてもかなりハイリスクです。そのかわり、それなりのリターンも期待できます。
その一方で、個人向け国債なら、無リスクだと考えていいはずです。そのかわり、これを書いている時点(2019年4月)だとほとんど増えることは期待できません。
計画は柔軟に変更しましょう
上に書いたように、65歳で引退したとすると、その後に20年から30年程度の引退生活が待っている可能性があります。率直に言って、かなり長いです。
これだけ長い期間ですから、政治的あるいは経済的に、全く変化が無いと考える方がおかしいでしょう。変化して当然だと思っておくべきです。
ここで書いたような考え方は、ちょっとした変化なら十分に対応可能なものです。でも、本当に大きな変化があると、対応しきれない部分もあるでしょう。
大きな戦争でもあったら、どんな変化があるかわかりませんからね。金融資産の価値がほとんど無くなるかもしれません。
ですから、基本的なプランはしっかり持ちつつ、変化にも対応できる心構えをしておくのが肝心ではないでしょうか。
iDeCoでは金融機関選びが大事
iDeCo をはじめるには、運営管理機関を選ぶ必要があります。運営管理機関というのは、窓口となる金融機関の事ですね。
この運営管理機関選びが、実は、かなり大事です。というのも、金融機関によって月々の手数料がだいぶ違いますし、取り扱っている投資信託の種類も違うからです。
個人的にお勧めなのは、SBI証券です。SBI証券は月々の手数料が167円と最低ですし、運用に使える投資信託もかなり多いのです。
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