老後の生活資金を準備する金融商品に、個人年金保険があります。この、個人年金保険は、有利な商品なのでしょうか。
世の中には、「国民年金なんてやめて、みんな民間の年金(個人年金保険と思われる)に入ればいい」なんてことを言う人がいるほどです。本当に、それほど良い金融商品なのでしょうか。
国民年金と個人年金保険を比較することで、検証してみましょう。
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個人年金保険って、国民年金より有利なの?
かなり以前、テレビ番組で、「国民年金の保険料なんて払わないで、代わりに個人年金保険に入ればいい」というようなことを言っていた人がいました。タレントさんではなく、文化人だったと思うのですが。
国民年金の保険料は、年によって変化します。現状だと1万6000円台です。これは、個人年金保険の保険料と、比較的近い額だと言っていいでしょう。
ですから、国民年金に対して不信感を持っている人には、この文化人の提案はいいアイディアに思えるかもしれません。世の中には不思議なことに、「国民年金なんてもらえない」と、結構本気で信じているようですからね。
国民年金の保険料を払うのは義務です。ですから、現実問題として、国民年金をやめて個人年金保険に入るという事はできません。
それでも、仮に国民年金をやめて個人年金保険にしたら、有利なのか不利なのかというのは知っておきたいところでしょう。実際にどうなのか、ちょっと検討してみましょう。
【個人年金保険の方が有利】世代間格差が生まれるのは国民年金の弱点だが
よく言われている国民年金の問題点は、生まれた時期によって損をする世代があるという点でしょう。これは間違いのない事実です。
これから年金を貰う世代は、今年金を貰っている世代と比べて明らかに不利になるはずです。国民年金というのは、少子高齢化が進むと、現役世代は損をするような制度なのです。最初からそういう仕組です。
まあ、これは逆に言うと、いま年金を貰っている世代は有利という言い方もできるのですけどね。現役の世代が不公平感を感じるのは当然でしょう。
個人年金保険は入るタイミングで有利不利がある
これに対して個人年金保険は、世代間の格差もなく公平に思えます。でも、そんな単純な話でもないのです。
というのも、個人年金保険は契約するタイミングで、金利がぜんぜん違うからです。今契約すると、予定利率という運用の金利は、かなり低いものとなるでしょう。
そして、この予定利率は固定金利なので、年金を貰うまでずっと低いままです。ということは、国民年金に近い世代間格差は存在するわけです。
個人年金保険の方が多少マシだとは思いますけどね。世間で思われているほど大きな差ではありません。
ということで、この点に関しては、個人年金保険が若干有利という結論にしておきましょう。
【国民年金が有利】どちらも所得税の控除に使えるが
個人年金保険は保険料の一部が、所得税の所得控除に使えます。この事はご存知の方も多いでしょう。
正確には、生命保険料控除という控除が使えます。個人年金保険の場合は、上限が年4万円です。所得税を計算するときに、4万円所得が小さいとみなされるわけですね。所得が小さいので、所得税は安くなります。
しかし、保険料が所得控除に使えるのは、国民年金も同じです。国民年金の保険料は、社会保険料控除の対象になるのです。
しかも、国民年金の保険料の場合は、保険料の全額が控除の対象になります。例えば、月々の保険料を1万6340円(平成30年度)とすると、年間で19万6080円が控除として使えるわけです。
これって、生命保険料控除の4倍ですよね。つまり国民年金というのは、控除に関しては、個人年金保険の4倍有利と言えるわけです。
【国民年金が有利】制度が破綻するリスクは
一番最初に書きましたが、国民年金の制度が破綻することを心配している人はいるようです。ただ、杞憂であると考えていいでしょう。
率直に言って、私には、動やったら破綻するのか想像もできません。ここでは詳しくは議論しませんが、破綻するというのは、かなり大袈裟な話だと思ってください。。
正確に言うと、年金額が減額されるか、年金の受給開始年齢が遅れる可能性はあります。でも、制度の破綻はまずありえません。
誰かが悪意を持って広めた嘘だと思っていいでしょう。政治的な意図なのか、ビジネス上の意図なのかは知りませんが。
生保会社は過去に破綻している
制度破綻のリスクは、むしろ、個人年金保険の方が大きいと考えた方がいいでしょう。具体的には、生命保険会社の倒産ですね。
実際、生命保険会社の倒産は、過去にいくつも例がありますからね。今後起こっても、何の不思議もありません。
生保会社が倒産しても、年金がゼロになる事はありません。生命保険会社すべてが入っている保険があるからです。
でも、減額は免れ得ないでしょう。
【国民年金が有利】国民年金には国からの補助がある
国民年金には個人年金保険にはない大きなメリットがあります。それは、国からの補助があるという点です。
国民年金に国からの補助があるというのは、非常に重要な情報のはずなんですけどね。意外と知らない人がいるようで驚きます。
具体的には、給付の半分は国庫負担です。つまり国民年金は、保険制度であるのと同時に、国家による所得再配分の仕組みでもあるのです。
国民年金の基本的な考え方は、その年に受け取った保険料のほぼ全額を原資に、給付するというものです。ということは、実際の国民年金の給付というのは、集めた保険料の2倍が支払われていることになるわけですね。税金が同額上乗せされていますから。
個人年金保険は状況が逆
個人年金保険では、状況は正反対です。
民間の生命保険は、保険料のなかから手数料を取らないといけません。ということは、集めた保険料よりも給付は減ることになるわけですね。これは、個人年金保険でも例外ではありません。
上乗せがある国民年金と、手数料を抜かれる個人年金保険で、どちらが有利かは明らかでしょう。
【国民年金が有利】インフレに強いのは
個人年金保険には、もう一つ大きな弱点があります。それは、インフレに弱いという点です。
個人年金保険は、予定利率という固定利率を使って計算されます。ということは、インフレになると運用している残高が実質的に目減りするというわけですね。
個人年金保険の場合は、運用期間が長期になることが多いでしょう。ということは、年金を貰うまでに大きなインフレがあっても、何の不思議もありません。
しかも、ここ最近は、10年物国債ですら金利がつかなような状況です。こんな金利が低い時期に個人年金保険の契約をしたら、ちょっとした金利上昇やインフレでも損をする事になってしまいます。
一方の国民年金は、意外なことに、インフレには強いのです。というのも、今年受け取った保険料で今年の給付を賄うというスタイルなので、インフレがあったら集める保険料を増やせばいいのです。そうすることで給付も、インフレ率に応じて増やすことが可能です。
個人年金保険と比べたら国民年金は遥かに有利
ここまで見て来たように、個人年金保険と国民年金を比べると、国民年金の方が明らかに有利と言っていいでしょう。国民年金をやめて民間の保険を云々といった人は、ちゃんと分かっていたのでしょうか。
テレビなどでそういう発言をすると、簡単に信じてしまう人は少なくないでしょう。迷惑なので、やめたもらいたいのですけどね。
最近は、以前ほどは、テレビを無批判で信じる人は減っている印象です。それでも、一定の影響力はありますからね。せめて裏を取ってから発言していただきたいものです。
iDeCoでは金融機関選びが大事
iDeCo をはじめるには、運営管理機関を選ぶ必要があります。運営管理機関というのは、窓口となる金融機関の事ですね。
この運営管理機関選びが、実は、かなり大事です。というのも、金融機関によって月々の手数料がだいぶ違いますし、取り扱っている投資信託の種類も違うからです。
個人的にお勧めなのは、SBI証券です。SBI証券は月々の手数料が167円と最低ですし、運用に使える投資信託もかなり多いのです。
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