iDeCo は基本的にメリットが大きい仕組みですが、デメリットが無いわけではありません。あまり知られていないのが、受け取る時に払う所得税が大きくなるケースがあるという点です。
特に気をつけたいのが、会社員で比較的大きな退職金を貰う人です。扱いを間違えると、かなり大きな税金を取られてしまうでしょう。
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会社員にとってのiDeCo はちょっと違う?
iDeCo に関しては、有利だと紹介されることが多いようです。実際、このサイトでも紹介していますが、所得税を払う程度の稼ぎがある人にはメリットが大きいようです。
そして、所得が大きければ大きいほど、メリットも大きくなります。医師のような高額所得者だと、かなりの節税ができます。
逆に言うと、所得税を払うほどの収入が無い場合、別の金融商品の方が良さそうですけどね。例えば、専業主婦もiDeCo を使えるようになりましたが、こういう人の場合はNISA などの他の商品が良いわけですね。
所得が多い人にデメリットは無いのだろうか?
それでは、ある程度稼ぎがある人に取っては、なにかデメリットはないのでしょうか。メリットばかりが強調されると、逆にちょっと不安になりますよね。
iDeCo のデメリットとして比較的よく知られているのが、途中で解約できないという点でしょう。基本的には、60歳になるまでは、全く現金化できません。
しかしそれ以外にも、人によってはiDeCo の仕組みが不利になることがあるようです。制度をよく知って利用しないと、必要以上に高い税金を取られることがあるのです。
まあ、一般的には、メリットに比べれば小さいデメリットですけどね。それでも、十分に考慮するべきでしょう。
メリットが大きいというプラスの情報だけを与えられるのは、判断を間違う原因にもなりますからね。しっかりとデメリットも把握しておきましょう。
このページでは、特に、会社員がiDeCo を使う場合のデメリットについて見てみましょう。
iDeCo では損をしても税金を払うことになるケースも
通常の投資信託などでの投資では、儲かった分に対して所得税が課税されます。
例えば、100万円で買った投資信託を150万円で売ったとしましょう。この時、所得税がかかるのは、儲けの50万円に対してです。
ということは、儲けが出なかった場合は税金がかかりません。所得税は所得に対する税金ですから、当然ですね。
このあたりは、実際に株式や投資信託を買ったことがある人ならご存知でしょうか。
確定拠出年金は全額に課税
しかし、確定拠出年金は、儲けではなく年金や一時金として受け取る金額すべてに対して課税がされます。
例えば、総額で2,000万円拠出したとします。しかし運用があまりうまくいかず、60歳時点で一時金として1,900万円を受け取ったとしましょう。
投資信託を使った投資であれば、損をしたわけですから、この場合は課税されません。しかし確定拠出年金の場合は、税金がかかる事があるというわけです。
トータルではプラスになることが多い
もっとも、こんなふうに課税されたとしても、トータルでプラスになる可能性は大きいと考えられます。なぜかというと、iDeCo では、拠出時の所得税減税があるからです。
このメリットが大きいので、受取時のデメリットがあっても、トータルでプラスになることが多いのです。
また、詳しくは後述しますが、iDeCo は一時金で受け取ると、退職所得という有利な形での受け取りが可能です。退職所得として扱われることで大きな控除が受けられ、結果的に税金がかからないというケースも多いのです。
しかし、これらの税制上のメリットがあっても、ケースによっては赤字でも税金を払うということにもあるでしょう。あるいは、普通の投資信託よりも税金が高くなる可能性がないわけではありません。
これがあまり知られていないiDeCo のデメリットというわけです。
まあ、あまりないことだとは思いますけどね。該当する人も、少ないながらも存在するのも事実です。
一時金で貰う場合は大きな控除がある
iDeCo 受取時の所得税がかかるかどうかは、会社員の期間の退職金の影響を受けます。比較的高い年齢(例えば60歳前後)まで会社員で退職金がそれなりに大きな額だった場合、所得税の特に影響が大きくなるのです。
そのことを確認するために、まず、確定拠出年金の受け取り方と退職所得の基本について確認しておきましょう。
確定拠出年金は一時金で貰うと有利
確定拠出年金は、60歳以降に受け取ることができます。そして、70歳までに受け取り始めないといけません。
受給は年金で貰うこともできますし、一時金で貰うこともできます。そして、一時金でもらったほうが有利なケースが多いようです。
ちなみに、一時金でもらった場合、所得税を計算する上で、iDeCo の給付は退職金とみなされます。つまり、退職所得として所得税が課税されるのです。
退職所得として課税される場合は、かなり大きな減税措置があります。この減税措置が大きいので、有利になることが多いわけです。
退職所得が有利な理由
具体的には、まず、拠出金を出した期間に応じた控除があります。掛金を拠出した期間が長いと、それに応じて税金が小さくなるのです。
例えば、50歳から60歳までの10年間だけ拠出した人よりも、30歳から60歳まで30年拠出した人の方が大きな控除があるわけですね。しかも、20年を超えると控除はさらに大きくなります。
■ 退職所得控除があるので非課税になりやすい
iDeCo における退職所得控除の考え方を、もう少し詳しく説明しましょう。
一時金で受け取る場合、iDeCo の拠出をした期間は、勤続年数にカウントされます。そして、退職所得の場合は、勤続年数に応じた所得控除があります。
例えば、20年間にわたり毎月2万円を拠出した人(Aさんとしましょう)がいるとしましょう。この場合は勤続期間が20年で、拠出額が480万円になります。
運用が全くうまくいかず、結果的に500万円にしか増えなかったとします。20年も運用して20万円しか増えていないわけですから、運用としては大失敗ですね。
ただ、この場合(拠出した期間が20年)は、退職所得控除は800万円あるので、税金はかかりません。一時金として受け取った500万円よりも退職所得のほうが大きいので、税金がかからないのです。
また、これまでの掛金に対する減税があるので、その分のプラスもあります。
ということで、運用では失敗しましたが、この人はトータルでは儲けることができたはずです。どの程度儲かったかは、所得によってかなり違うので、正確な額はなんとも言えませんけど。
■ 退職所得控除を超えた分も有利
また、仮に運用が上手く行って800万円を超えた場合も、有利な扱いがあります。
退職所得の場合は、退職所得控除を超えた分の半分しか課税対象になりません。このルールがあるので、通常の所得よりはかなり税負担が軽いのです。
例えば、Aさんの運用が上手く行って、900万円まで増えたとします。まず所得控除が使えますから、900万円 – 800万円で100万という金額が出てきます。
退職所得の課税の場合は。この100万円がさらに半分になるのです。つまり、退職所得は50万円とみなされるわけですね。
退職所得が50万円だと、税率は5%なので、所得税は2万5000円しかかかりません。
つまり、420万円も儲かっているのに、2万5000円の税金しかかからないのです。利益に対して1%以下の税金です。
これは、通常の投資信託などと比べてかなり有利です。投資信託で同じことをすると、420万円の利益の20%の84万円を税金として取られます。
と、このように、一時金で貰うと、かなり有利な扱いがあるのです。
年金でもらった場合も控除はありますが、一時金でもらった場合ほどのメリットはないケースが多いです。
会社員が退職金を貰う場合はこのメリットが活かせないことも
このように、一時金で貰う場合は、退職所得のメリットが活かせるので税制上は有利と考えられます。上に書いたような元本にも課税されるという点を含めても、まだ有利というケースがほとんどです。
しかし、ある程度の大きい額の退職金が出るような企業の場合、このメリットを十分に活かすことができません。退職金をもらった時に退職所得控除を使ってしまうので、確定拠出年金の受け取りの時には退職所得控除が使えないことがあるのです。
例えば、60歳で定年退職した時に3,000万円の退職金が出たとします。そして、68歳の時にiDeCo の一時金1,000万円を受け取ったとしましょう。
68歳でiDeCo の一時金を受け取った時には1,000万円に対する退職所得控除が無いと考えられます。2分の1の規定は使えますから、500万円の所得があったものとして所得税が課税されるのです。
退職金と同じ年に貰うと最悪のケースに
さらに、退職金と確定拠出年金の一時金を一緒に受け取ってしまうと、退職所得がかなり大きくなることがあります。この場合は、1年でも貰うタイミングをずらしたほうがいいかもしれません。
例えば、60歳で退職して、退職金3,000万円とiDeCo の一時金1,000万円を受け取るという人はいるでしょう。しかしこの場合、iDeCo の一時金を61歳の時に貰うほうが税金が安くなるのです。
勤続年数40年などの仮定を置いてざっくりと計算してみましたが、所得税の額が50万円程度は違います。ちょっとした知識が有るかないかで、かなりの差が生じることが分かるでしょう。
退職所得の説明で難しいのが、どうするのがベストかは個々のケースによって違うという点です。はっきり言って、かなり勉強しないと無理です。
簡単に言えるのは、上に紹介したように、退職金とはタイミングをずらしたほうがいいというくらいです。
なんにしても、退職金の額が大きい人は、ちょっと注意が必要なのは間違いないでしょう。よく検討してみましょう。
税理士を頼っても良いのではないか
退職金が多い人の場合は、税理士などに相談したほうがいいかもしれません。その方が、トータルでは節約できるでしょう。税理士に相談したところで、50万円も取られはしないでしょうからね。
もちろん、金融機関に相談しても答えてくれるかもしれませんが、変な金融商品を売りつけられる可能性も大きそうです。実際、ラップ口座やファンドラップなどの明らかに不利な商品を、退職者向けに積極的に売っているようですからね。
まさに、鴨が葱を背負ってという状態になってしまうでしょう。だったら、正当な対価を払って専門家に相談したほうがいいでしょうね。
何でこのデメリットは知られていないのだろう
会社員の退職金のケースは、iDeCo のデメリットとしてはかなり大きなものでしょう。金額的には結構大きくなるケースが有るはずです。
また、どういう形で受け取るのが有利なのかという情報は、もうちょっと解説する人がいても良さそうですね。受け取り方をちょっと工夫するだけで、数万円程度の差が出ることは珍しくないでしょう。
このあたりの情報は、はっきりいって手薄です。説明が難しいので、みんな避けているのでしょうか。ちょっと不思議です。
きっと、知らないで、高い税金を払っている人も多いのでは無いかと思います。
iDeCoでは金融機関選びが大事
iDeCo をはじめるには、運営管理機関を選ぶ必要があります。運営管理機関というのは、窓口となる金融機関の事ですね。
この運営管理機関選びが、実は、かなり大事です。というのも、金融機関によって月々の手数料がだいぶ違いますし、取り扱っている投資信託の種類も違うからです。
個人的にお勧めなのは、SBI証券です。SBI証券は月々の手数料が167円と最低ですし、運用に使える投資信託もかなり多いのです。
iDeCo に興味があれば、資料請求だけでも取り寄せてみたらいかがでしょう。まとまった情報が得られますよ。

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