先日、公的年金の運用で、過去最大の損失があったという発表がありました。マスコミはこういうニュースが大好物ですから、かなり批判的なニュアンスで報じています。
特に厳しい見出しだったのが、時事通信の次の記事でしょう。
- 公的年金の運用損失7.8兆円=過去最大、株式投資拡大が裏目―7~9月(時事通信)
Yahoo!ニュースのコメント欄は敏感に反応
「裏目」と言う単語を使っている時点で、かなり強く非難しているニュアンスが読み取れます。そして、記事のタイトルしか見ない人を不安にさせるにはとても良いタイトルです。
その証拠に、Yahoo!ニュースのコメント欄では、辛らつな批判が次々に書き込まれています。もっとも、Yahoo!ニュースのコメと欄は、かなり高い確率で辛らつな批判が並ぶのですけどね。
なんで人の年金でマネーゲームしてんだよ。
これだけ損しても誰も責任とらないんですよね。
いつもの事だが、年金財源を散財しても、運用に失敗しても、いつも「無くなっちゃいました~。」で済ませるよね。
それでは実態はどうなのかというと、実はそれほど重要なことがおきているわけではありません。たまたま悪い条件がいくつか重なっただけで、たいした影響は起きていないと思って良いでしょう。
批判している人たちも、脊椎反射的に批判しているだけで、内容はよく分かっていないようですね。実際、現時点で見ると、対して損は出ていないはずなんです。
なぜ損失が大きくなった
今回損失が大きくなったのは、2つの要素が影響しています。
一つは中国の株安の影響などで、日本の株価が大きく下がったからです。ただ、これに関しては既にある程度回復しています。ですから、現時点で見ると、影響は軽微なのです。
もう一つの理由は、年金資産の運用で、株式が占める割合が大きくなったからです。ポートフォリオの見直しを行い、昨年10月に株式の比率を25%まで増やそうとしています。その時期に株価の下落があったので、今までの株価下落よりも影響が大きくなったのです。
それに加え、外貨建ての資産を増やしていたために、円高傾向で損をしたという部分もあるようですね。
まあ、悪条件が重なったということです。たまたま調査したタイミングが悪かったと言うくらいの話なのです。
繰り返しますが、株価はかなり戻っています。それに、為替の水準もその時期よりは円安になっています。ですから、現状では、問題は損失はかなり取り戻せていると考えていいわけです。
株式で運用するのが良いのか?
とりあえず、今回の件に関しては、大きな問題ではないことは分かりました。それでは、株式を使って年金資金を運用することに問題は無いのでしょうか。
これに関しては、例えば、フジテレビのニュースの中で次のような疑問が出されています。
2人の子どもを持つ川畑明美さん(46)は、株の投資を行う個人投資家でもある。
国内株式中心に、GPIFと同じ、長期投資を心がけているという。
この5年間で、およそ180万円の利益が出たという。
川畑さんは「年金を今まで、ほぼ国債でやってきた日本の国が、どこまで増やせるスキルがあるのかという不安は、多少ありますね」と話した。1
たまたま最近投資が上手くいった素人に、この手のことを言わせるのは、テレビ局が十八番としている手法ですね。実は結局、自分たちが言いたいことを、一般の人を使って言わせているだけなんですけどね。なにせ、川畑さんの発言を選んだのは、ニュース番組のディレクターですから。
こうすれば自分たちは責任を負う必要がありません。テレビ局がずっと使っている、責任回避の方法です。要するにフジテレビは、お役人に運用させて良いのかという批判をしたいわけです。
テレビ局のやり方に関しては置いておくとして、確かにお役人が運用できるのかという疑問はあるでしょう。でも、実はこれに関しては問題が無いと考えて良いでしょう。理由は2つあります。
1つ目の理由は、専門家に丸投げしているので、そもそもお役人が直接運用することは無いからです。お役人が運用しなければ、お役人が失敗することもありません。
そして2つ目の理由ですが、これだけ規模が大きいと誰が運用しても大差が無いからです。規模が大きすぎるファンドでは、結局市場平均程度のパフォーマンスしか得られないと考えられています。
つまり、意図的に損をしようとでも思わない限り、お役人だからと言う理由で失敗はできないようになっているのです。市場平均が上がれば儲かり、下がれば損をするという単純な話になっているわけですね。
誰が運用するかと言うよりも、どんな経済政策を選ぶかという方が、重要なファクターなのです。
株式で運用するのが良いのか?-その2
お役人が運用することによるデメリットはそれほどないとして、そもそもポートフォリオに株式を組み込むことの是非はどうなのでしょうか。
実は、株式を組み込む是非の方が議論になりそうです。この点に関しては、専門家の中にも反対している人が少なくありません。
経済や投資の専門家の多くは、株式を組み込むことに賛成している人が多いと言う印象です。ただ、専門家でも、株式を組み込むことに反対している人もいます。例えば、株式ではなく、物価連動国債を使うことを主張している人もいますね。
専門家でも意見が分かれる、中々難しい問題のようです。
- 約8兆円の年金運用損 将来の年金は大丈夫なのか検証しました。
フジテレビ系(FNN) 2015年12月1日 [↩]
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