確定拠出年金の給付には税金がかかります。しかも、受け取り方によって、税金の種類が違います。
具体的にどんな給付の仕方があるのでしょうか。また、それに対してどんな税金がかかるのでしょうか。確認してみましょう。
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給付の種類
確定拠出年金には、次のようの4つの種類があります。
- 老齢給付金
- 障害給付金
- 死亡一時金
- 脱退一時金
書いて字の如くというものばかりなので、どんな給付かわからないという人は無いでしょう。
少しだけ補足すると、障害給付というのは、一定のレベル以上の身体障害者になったということです。単に怪我をしただけでは障害とは言えませんので注意が必要です。「障害」と「傷害」は同音異義なので、混同しやすいですね。
老齢給付金と障害給付金は、一時金でもらうこともできれば年金でもらうことも可能です。また、一部を一時金として受け取り、残りを年金にするということも可能です。
ほかにも細かくいろいろと条件が決まっていますが、ここでは踏み込みません。
受け取り方による税金の違い
まず老齢給付金は所得税の課税対象になります。一時金で受け取った場合は、退職所得として計算がされます。年金で受け取った場合は、雑所得と認められます。このとき、公的年金等控除が適用されるという、税制上の優遇措置があります。
ある程度額が大きい場合は、退職金や公的年金などを考慮して、有利な受け取り方を考えたほうがいいかもしれません。受け取り方しだいで、支払う税金の額がだいぶ違ってくるはずです。
次に障害給付金ですが、これは一時金で受け取っても年金で受け取っても非課税です。特に考える余地はありません。
死亡一時金の場合は、相続税の課税対象になります。この場合も選択の余地はないのですが、他の資産を工夫すれば節税ができるかもしれません。まあそもそも、相続税が課税される程度の財産を持つ人に限った話ですけどね。
最後に脱退一時金として受け取った場合は、一時所得と成ります。ただ、脱退一時金の額が50万円以下であれば、非課税です。脱退一時金に関しても、選択肢はなさそうです。
老齢給付と税金
上で、老齢給付を一時金で貰う場合と年金で貰う場合で、税金が違うという話をしました。ここでは、受け取り方法で税金がどう違うのか、もう少し見てみましょう。
ただ、残念なことに、しっかり説明しようと思うと、非常に複雑な話です。全部を説明できる話ではないので、概略だとご理解ください。
一時金で貰うと分離課税
まず、上で見たように、一時金で受け取った場合は退職所得とみなされます。所得なので、所得税がかかります。
ただ、給料や個人の事業などと異なり、退職所得というのは分離課税です。分離課税というのは、他の所得とは分けて計算されるということですね。
例えば、同じ年に給料をもらったとしても、その給料にかかる税金とは分けて計算されるわけです。
一般的には総合所得と言って、異なる所得であってもまとめて所得税の計算がされます。しかし、一時金でもらった場合は別枠になるということです。
実は、このことは税金が安くなる要素です。例えば、給与所得500万円と、退職所得1,000万円を同じ年にもらったとしましょう。もしこれが総合課税であれば、2つを合わせて1,500万円に対する税金となります。この場合の税率は33%です。
しかし、実際には、給与所得500万円と退職所得1,000万円を別々に計上できます。そうすると、それぞれの税率は給与所得の税率が20%、退職所得の税率23%となります。
日本は累進課税と言って、所得が大きくなるほど税率が高くなる仕組みになっています。ですから、2つに分けたほうが、税率が小さくなるわけですね。
年金で貰うと総合課税
一方、年金として受け取った場合は、雑所得とみなされます。雑所得は総合課税です。
繰り返しますが、所得税の所得というのは、原則として、その年の所得をすべて合算して求めるのが一般的です。これが総合課税です。
雑所得で受け取る場合は総合課税ということは、他の所得も税額の決定に影響します。これが退職所得との大きな違いの一つです。
例えばある会社員が、給与の他に、公的な老齢年金(老齢基礎年金と老齢厚生年金)とiDeCo の老齢給付金を年金でもらっていたとします。所得税の金額を決める場合は、これらを合算して求めることになります。
つまり、この会社員の所得は大きくなり、その結果として所得税が大きくなるのです。60歳以降も会社勤めをする場合は、その給与所得と雑所得を合算して所得が決まることになるわけですね。
ということは、仕事をしている人がiDeCo の老齢年金を貰うと、税金で多くを取られる可能性があるわけです。これが、一時金として貰うほうが有利になることが多い理由の一つです。
年金で受け取る場合は公的年金等控除
iDeCo の老齢給付を一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合では、所得税の控除も違います。
控除というのは、要するに、所得が実際の収入よりも小さものとみなしてくれる制度ですね。所得が小さいとみなされれば、所得税も小さくなります。
iDeCo を老齢年金として受け取ると、公的年金等控除が扱えます。この公的年金という控除は、雑所得を計算するときに、①iDeCo の年金額と公的年金の給付を合算し、②収入に応じて決まる割合を掛け、③その合計から収入に応じて決まる公的年金等控除の額を引いて決まります。
例えば、年金額が300万円の場合で65歳以上の場合、「収入に応じて決まる割合」は100%で、「収入に応じて決まる公的年金等控除の額」は120万円となります。そうすると、雑所得は次のようになります。
雑所得 = 300円 × 100% – 120万円
= 180万円
このように公的年金と合わせて300万円程度の年金でも、180万円の所得があることになります。他の所得控除にもよりますが、所得税を払うことになる可能性は小さくなりでしょう。
ということは、そもそもの公的年金の額が大きい人は、公的年金等控除を使っても、比較的大きな税金がかかる可能性が大きいわけですね。
ということで、他の年金や所得の影響で、税金がかかる可能性が大きいわけです。iDeCo の年金の金額が小さい人なら、公的年金等控除があるので所得税がかからないこともありますけどね。
逆に、iDeCo の年金額も公的年金の年金額も小さい人なら、所得税を課税されない可能性もあります。細かい条件は様々なので、どういう場合に課税されるかは簡単には言及できませんが。
一時金で受け取る場合は退職所得控除
一方、一時金で受け取る場合は、退職所得控除という大きな控除もあります。退職所得控除は、勤続年数が20年を超える場合、次の計算式で計算されます。
退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数 – 20年)
iDeCo の場合は、掛け金を拠出した期間を勤続年数とみなします。例えば、30年間拠出した場合、1,500万円が所得控除の対象になります。
このように退職所得控除は額が大きいので、多くの場合、一時金として受け取ったほうが有利なケースが多いようです。常に一時金の方が有利ということでもないのですけどね。
例外的なケースとしては、、退職金が大きい場合です。
退職金の退職所得控除と、iDeCo の退職所得控除は、同じ枠を使っているというのが原則です。ということは、退職金の額が大きければ、退職所得控除を退職金だけで使ってしまいます。
その場合は、一時金でもらったほうが高くつく場合もあるので、ちょっと注意が必要です。まあ、比較的稀なケースだとは思いますが。
退職所得は2分の1
退職所得には、さらなる優遇があります。
通常は収入から控除を引くことで所得が求められます。しかし、退職所得の場合は、控除を引いた上で、さらにそれを半分にするのです。
例えば、掛け金を拠出した期間が30年だとすると、上に書いたように、控除額は1,500万円です。一時金の額が2,500万円だとすると、まず2,500万円から控除額の1,500万円を引きます。
退職所得の場合は、2,500万円と1,500万円の差額の1,000万円をさらに2で割るのです。つまり、退職所得は500万円とみなされます。
この2分の1倍できるという点も、退職所得が有利な点です。ですから、多くのケースで、年金としてもらうよりも一時金として貰うほうが有利になるわけですね。
退職金が多い人は専門家に相談
このような計算方法を取るので、繰り返しになりますが、iDeCo は年金で貰うよりも一時金でもらったほうが有利なことが多いです。しかも、少しでも受け取る年齢を遅くしたほうがいいでしょう。現行制度だと70歳で貰うことになります。
もちろん、もっと早いタイミングで必要なら、早めにもらっても問題はありませんけどね。事情が許せば、少しでも遅らせることを考えましょう。
また、会社勤めの人で、退職金が多い人の場合は、iDeCo を年金でもらったほうが有利な人もいるでしょう。そういう人の場合は、専門家に相談することをおすすめします。
このあたりの税金の試算は、率直に言って非常に難しいです。ですから、自己解決は大変だと思われます。自分でわかったつもりでも、間違っている可能性もありますしね。
ただ、相談と言っても、金融機関に相談するのはやめたほうがいいです。退職者向けの変な金融商品を勧められるだけですから。
例えば、少し前には、退職者狙いでファンドラップやラップ口座を売りまくったという話があります。でも、ファンドラップやラップ口座は、手数料が高すぎて、お世辞にもいい金融商品とは言えないのです。
要するに、鴨が葱を背負ってという状態です。ご注意を。
iDeCoでは金融機関選びが大事
iDeCo をはじめるには、運営管理機関を選ぶ必要があります。運営管理機関というのは、窓口となる金融機関の事ですね。
この運営管理機関選びが、実は、かなり大事です。というのも、金融機関によって月々の手数料がだいぶ違いますし、取り扱っている投資信託の種類も違うからです。
個人的にお勧めなのは、SBI証券です。SBI証券は月々の手数料が167円と最低ですし、運用に使える投資信託もかなり多いのです。
iDeCo に興味があれば、資料請求だけでも取り寄せてみたらいかがでしょう。まとまった情報が得られますよ。

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