AIJ投資顧問の問題発覚を機に、厚生年金基金が財務的に厳しい事が明らかになりました。正確に言うと、知っている人は知っていたんですけどね。表立った問題がおきなかったので、見て見ぬふりをしてきたという感じでしょうか。
私たちの老後の生活資金にかかわる話ですから、このまま放置することはできません。そこで、厚生年金基金に対する対応策が決められたようです。制度として問題もあるので、基本的には制度自体をおとり潰しにする方向のようですね。
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厚生年金基金の多くは財務的にボロボロ
AIJ 投資顧問の問題発覚を機に、厚生年金基金の多くは財務の面で大きな問題を抱えていることが明らかになりました。運用が上手くいっていない結果、AIJ投資顧問のようなところに手を出してしまったわけですね。
これを問題視した厚生労働省は、2014年2月に厚生年金基金の見直しに向けた方針をまとめました。それによると、存続できるのは全体の1割程度になると言うことです。ということは、9割は健全ではないと判定されたわけです。
生き残った1割も、将来的には他の企業年金に以降する所が多いという見通しを示しています。実質的な制度のおとり潰しと言って良いような方針を出しました。
- 厚生年金基金、1割弱が存続へ…資産で線引き(読売新聞)
企業としては手を引きたいはずだよね
おそらく企業としては、確定拠出年金などの他の企業年金に移行したいと思っているでしょう。確定拠出年金なら、企業の責任は限定的ですからね。掛け金さえ払っていれば、最終的に運用に失敗しても企業は責任を負わないで済みます。
ですから条件的に生き残れる基金でも、他の企業年金に移行する会社も多いと思うのです。企業年金の運用失敗が原因で倒産するなんて、洒落になりませんからね。逃げ出せるのなら逃げ出したいでしょう。
複数企業で基金を作っている場合は、基金との利害対立があるのでしょうけどね。利害調整がうまく行かなければ、ずるずると存続する基金もあるかもしれません。
また、基金を解散するとなると、年金の減額も必要になります。それを従業員に納得させられるかという問題もありそうですね。
最終的にどうなった?
このように、大問題になった厚生年金基金ですが、次のような形で決着しました。
- 2014年4月1日以後は新規設立は認められない
- 厚生年金基金の運用には国が関与する
- 財務状況が悪い基金には厚生労働大臣が解散を命じることができる
強制的に即潰すという事ではありませんが、新規設立を認めていないことから、長期的には徐々に減っていくという形にしたようです。実質的には、制度のおとり潰しという感じでしょうか。
また、解散を決断できない基金のために、国が命じられるようにしたという雰囲気もありますね。これに関しては、情けない話だと思いますが。自分たちで解決できないからといって、国に決めてもらうって言うのはねえ。
まあ、兎にも角にも、AIJ投資顧問に端を発する厚生年金基金の財務問題に対しては、解決の処方箋が示されたわけです。
ちなみに、2012年9月27日に厚生労働省から方針が出され、2014年4月1日から新制度が動いています。
結果的に加入している事業所数はどうなった
さて、このような大騒ぎがあった結果、厚生年金基金はどうなったでしょうか。実は、早速、大きな動きがおきています。
企業年金連合会のサイトによると、制度が動き始めた2015年度の末には、厚生年金基金に加入している基金数は半減しているのです。具体的には
- 2012年度末:560
- 2013年度末:531
- 2014年度末:444
- 2015年度末:256
のように推移しています。
また、事業所数はさらに大きく減らしています。具体的な事業所数は、次のような感じで推移しています。
- 2012年度末:10.5
- 2013年度末:9.6
- 2014年度末:6.6
- 2015年度末:2.8
早くもAIJ投資顧問の問題発覚前の3割程度にまで減っているわけですね。まあ、このあたりでペースは鈍るのでしょうけど。
基金が減るペースよりも事業所が減るペースの方が早いようですね。ということは、存続している基金からも逃げ出している企業が多いという事なのでしょうね。まあ、そりゃそうだ。
あまりニュースとしては取り上げられませんが、厚生年金基金という制度の解体は順調であることが分かります。
補足:基金数と事業所数の違い
基金数と事業所数の違いが分かりづらいと思うので、ちょっと補足をしておきましょう。厚生年金基金というのは、一般には、複数の企業で一つの基金を作り運用をしています。グループ会社で基金を作る場合もありますし、同じ業種で基金を作ることもあります。
その基金から企業が抜けていくと、事業所数も減少していくという仕組みになっているわけです。企業数と事業所数も、また、ちょっと違うんですけどね。大雑把言うと、事業所数というのは、企業の中の支店や工場などの拠点の数だと考えれば良いでしょう。
確定拠出年金(企業型)は大きくなりそう
何にしても、厚生年金基金が減れば、確定拠出年金への移行は進むはずです。企業年金自体をやめてしまうわけにはいかないでしょうから。
このタイミングで、確定拠出年金の窓口をやっている金融機関の多くは、営業活動を活発化させているでしょうね。制度を乗り換えるタイミングなら、営業しだいではシェアを増やしやすいでしょうから。
補足:実際に確定拠出年金(企業型)は伸びているが
実際に確定拠出年金(企業型)の加入者数は伸びています。しかし、これが、厚生年金基金の影響かどうかを判断するのは、意外と困難です。
というのも、もともと増加傾向にあるので、今までの延長線として伸びているのか、厚生年金基金の解散の影響があるのか分かりづらいのです。
まあ、確定拠出年金(企業型)が増えている事だけは間違いありませんが。
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